土地活用には「貸地」と「借地権」があることをご存知でしょうか?
貸地と借地権は土地を貸すことですが、内容が少し異なるのです。
これらの違いや、おすすめの土地活用方法について、土地活用営業歴12年の私、林がご紹介します。
当コラムを読み終えたときに、ご自身の土地活用の指針ができていたら幸いです!
貸地とは
貸地とは、土地をそのまま貸すことを目的とした貸し土地のことです。
貸地に似たことばとして「借地」や「借地権」という言葉があります。
貸地と「借地」とは同じ意味合いで使われますが、貸地と「借地権」は内容が異なります。
また、貸地は基本的に建物を建てることを禁止しています。
しかし、貸地は大きな意味で利用されることがあり、建物を建築することを目的とした貸地=借地権も含めて貸地と表現するケースもあります。
借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的として土地を借りる権利のことです。
そして、借地権が設定された土地のことを「底地」と呼びます。
貸地は基本的に建物の建築を許可せず土地だけを貸すことを意味しますが、
借地権は建物を建築する目的で土地を貸すという違いがあります。
【さらに詳しく】借地権の種類
借地権には次のような種類があり、その種類により内容が異なります。
- 旧借地権
- 普通借地権
- 定期借地権(一般事業用借地・定期事業用借地・建物譲渡特約付借地権)
各種借地権の内容は細かく規定されていますがおおまかに説明すると、
「旧借地権」と「普通借地権」は一旦土地を貸してしまうと地主からは解約することができない権利で、
「定期借地権」は一定の期間が過ぎたら契約が自動解除になる権利です。
"貸地"で土地活用するときのメリット・デメリット
貸地と借地権で土地を貸す場合、それぞれにメリットやデメリットがあります。
貸地 土地活用のメリット
初期費用が少なくて済む
貸地で土地を貸すメリットの1つ目は、初期費用が少なくて済むことです。
貸地を貸すときは土地として貸し出すため、建物を建築するときに比べ土地造成費用が抑えられるという特徴があります。
土地と道路などの収入路に高低差がない場合は、ほぼ初期費用は必要ありません。
田や畑を貸し出す場合は初期費用がそれなりにかかりますが、田や畑に建物を建築できるようにするほど費用はかかりません。
賃貸借契約を解除しやすい
貸地は土地を貸し出すだけのため、賃貸借契約を解除しやすいというメリットがあります。
借地権のように土地に建物を建築するために土地を貸すと、借地借家法の適用を受けてしまいます。
借地借家法の適用を受けると、原則、地主は賃貸借契約を解除することができなくなります。
もしお子さんが土地を利用する可能性がある、土地を売却する予定があるなどの場合は賃貸借契約を解除しやすい貸地がおすすめです。
市街化調整区域でも貸しやすい
貸地は土地だけを貸すため、市街化調整区域内の土地でも貸しやすいというメリットがあります。
市街化調整区域とは人口を抑制するために設定される地域で、建物を建築することが原則できません。
そのため、市街化調整区域内では借地権で土地を貸すことは難しいですが、貸地であれば市街化調整区域内でも土地を貸せる可能性があります。
貸地 土地活用のデメリット
収益性が低い
貸地は収益性が低いことがデメリットです。
土地を借りた人は貸地は建物を建築しないため、土地だけで収益を上げます。
しかし、建物があるほうが収益は上げやすく、相対的に土地だけを貸す場合は賃料が低くなる傾向があります。
節税効果はほとんどない
貸地として土地を貸す場合は借り入れをする必要がなく、あまり節税効果はありません。
土地を貸すことにより相続税対策は可能ですが、土地の相続税評価が少し下がるだけで節税効果は大きくありません。一般的に相続税対策になる借り入れをして、相続財産との相殺をすることができません。
また、土地上にアパートなどの居住系賃貸物件を建築すると固定資産税が減税されますが、貸地ではこのような減税措置も受けられません。
"借地権"で土地活用するときのメリット・デメリット
貸地に続き、借地権で土地を貸す場合のメリットやデメリットをご紹介します。
借地権 土地活用のメリット
地代が比較的高い
借地権で土地を貸すときには、貸地より比較的賃料が高くなります。
土地を借りた人は土地上に建物を建築することにより、土地だけではなく建物でも収益を上げることができます。そのため、賃料が高くなる傾向があります。
長期間安定して貸すことができる
借地権では建物を建築するため、建築費用を回収するまでテナントが撤退しづらい傾向にあります。そのため、借地権は長期間にわたり貸し続けることができます。
また、借地権は賃料が高いため、長期間安定して土地を貸すことができます。
借地権 土地活用のデメリット
賃貸借契約は原則解約不可
借地権は借地借家法の適用を受けるため、原則、地主から借地権を解除することができません。
借地権には定期借地権という期限が到来した場合、借地権が自動的に解除される権利がありますが、定期借地権は事業用定期借地権で10年以上、一般定期借地権は50年以上貸さなければなりません。
そのため、すぐに土地を元に戻したいとしてもできなくなります。
また、事業用定期借地は最短10年で契約解除されますが、テナントは建築費用を回収しないといけないため、なかなか10年で契約してくれるテナントは多くありません。
多額の初期費用がかかる場合も
借地権で土地を貸す場合、多額の初期費用がかかるケースがあります。
借地権は貸地と同じく初期費用はあまりかかりませんが、場合によって多額の初期費用がかかるケースがあることに注意が必要です。
借地権は土地上に建物を建築するため、建築に必要なライフラインなどの設備を整えたり、貸地より造成の制限が厳しくなったりします。
このようなケースだと初期費用が数百万以上かかるケースが考えられます。
近隣トラブルが発生しやすい
借地権で土地を貸すと貸地よりも不特定多数の人が土地に出入りすることになり、近隣とのトラブルを引き起こしやすくなります。
土地だけ貸すだけだから近隣の人のことはあまり気にしなくて良い、というわけではないことには注意が必要です。
貸地と借地権の土地活用方法とは
貸地と借地権では土地活用法が異なります。それぞれの代表的な土地活用法方法を紹介していきます。
貸地での土地活用方法
- 資材置場
- トラックなどの車両置場
- 家庭菜園
- 墓地や霊園
このように貸地は建物を建築しない活用方法です。
墓地や霊園の場合は長期貸しになりますが、資材置場やトラックなどの車両置き場の場合は短期貸しにも対応可能です。
また、貸地は狭い土地から大きい土地まで貸せたり、市街化調整区域内の土地でも貸せたりする用途が多いのも特徴です。
借地権での土地活用方法
- 定期借地権付マンション
- ロードサイドの商業施設
- 工場や倉庫
- 病院やクリニック
借地権の土地貸しは、建物に多額の投資をしなければなりません。そのため、短期貸しはできず数十年以上の長期貸しになります。
借地権の土地貸しは建物を建築しなければならないため、市街化調整区域内の土地では対応できないケースがほとんどです。
貸地に関するよくある質問
ここからは貸地に関するよくある質問をQ&A方式で回答していきます。
-
貸地と底地は違うの?
-
貸地と底地は違います。
貸地は土地だけを貸し出している土地で、借地権として貸している土地のことを言います。
借地権との対比で底地は、底地権とも呼びます。貸地は土地だけを貸し出している土地と底地を含めて「貸し土地」という表現をするときがあるため、貸地と底地が一緒と思われることも多くありますが、違う土地です。
-
地代に消費税は課税されるの?
-
地代に消費税は課税されません。
地代は、消費税法で消費税が課税されない非課税取引と規定されています。
ただし、土地を貸している期間が1ヶ月に満たない場合や駐車場などの施設として利用される土地の場合、消費税は非課税にはなりません。
-
貸地に相場はあるの?
-
貸地にも相場があります。
貸す用途や貸す地域によって相場があります。
貸地は売買と違い、市街地だから賃料が上がるわけではなく、郊外でも高速道路ICが近いなどの要素があると賃料が変動します。そのため、売買に比べて相場把握が難しく、貸地相場を知るためには貸地のプロに相談する必要があります。
まとめ
"貸地"は土地を土地のまま利用することを目的とした人に貸す土地のことで、
"借地権"は建物を建築する目的とするために借りる土地のことでした。
貸地と借地権は借りる目的が違うため、活用方法や貸すことのメリットやデメリットも異なります。
そのため、貸地と借地権のそれぞれの内容を把握しておくことが必要です。
実際に土地を貸すときには、貸地と借地権の違いを把握したうえで、
私どものような土地貸しの専門家に相談することをおすすめします。
貸地などは土地が存在する地域により、メリットを最大限活かすことができるかが変わりますが、
そこまで個人が判断することは困難だからです。
当社では、みなさまの大切な土地の特性を最大限活かした土地活用方法を提案させていただきます。お気軽にご相談ください!